治療院開業のための完全ロードマップ|費用・準備をまるごと解説

「いつか自分の治療院を持ちたい」「独立して、自分の理想の施術を提供したい」
そんな夢を抱いている方は多いのではないでしょうか。整骨院や鍼灸院、整体院などの治療院を開業することは、施術者としてのキャリアの集大成ともいえる大きな目標です。
しかし、いざ開業を考えると「何から手をつければいいかわからない」「どのくらいお金がかかるの?」「必要な資格や届出は?」と、不安や疑問がたくさん出てくるものですよね。開業準備は多岐にわたり、一つひとつ確認しながら進めていく必要があります。
この記事では、治療院の開業を目指す方に向けて、開業費用の目安から必要な資格、準備のステップ、届出の方法、助成金・補助金の活用まで、開業に必要な情報をまるごと解説していきます。
この記事を読み終える頃には、開業までの道筋がクリアになり、「自分にもできそう」と思っていただけるはずです。
治療院開業の費用はいくらかかる?開業資金の全体像を把握しよう
治療院の開業を考えるとき、まず気になるのが「いくらお金がかかるのか」ではないでしょうか。治療院開業の費用は、開業する形態や規模、立地によって大きく異なりますが、ここでは一般的な目安をご紹介します。
治療院開業の費用相場はトータルで400万〜1,000万円程度
整骨院・接骨院・鍼灸院などの治療院を開業する場合、トータルで400万〜1,000万円程度の費用が必要とされています。設備を充実させたり、好立地にテナントを借りたりする場合は、1,000万円を超えることもあります。
一方で、自宅の一部を施術スペースにするなど、工夫次第では数十万円から開業することも可能です。整体院の場合は、自宅スペースを活用すれば10万円程度から開業できるケースもあります。
治療院開業資金の内訳を理解しよう
開業資金は大きく「初期費用」と「運転資金」に分けられます。それぞれの内訳を見ていきましょう。
初期費用の内訳
物件取得費用:100万〜250万円程度
テナントを借りる場合、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・前家賃などが必要です。一般的な整骨院で必要な広さは15〜18坪(約50〜60㎡)程度とされており、地域や立地によって費用は大きく変動します。都心部と地方では2倍以上の差が出ることもあります。
内外装工事費用:200万〜500万円程度
施術スペースの内装工事、受付カウンター、待合スペースの設置などが含まれます。スケルトン物件(何もない状態の物件)を借りる場合は工事費用が高くなり、居抜き物件(前のテナントの設備が残っている物件)であれば抑えられます。
機器・備品費用:200万〜330万円程度
施術ベッド、物療機器、タオル類、消耗品、受付周りの備品などが含まれます。最新の物療機器を導入する場合はコストが上がりますが、中古機器を活用したり、手技中心の施術にしたりすることで費用を抑えることもできます。
広告宣伝費:20万〜100万円程度
ホームページ制作、チラシ作成・配布、看板設置などが含まれます。開業時の集客はその後の経営を左右するため、ある程度の予算を確保しておくことをおすすめします。
運転資金の目安
開業後すぐに売上が安定するとは限りません。特に保険施術を行う場合、保険請求から入金まで3〜6ヶ月かかることもあります。そのため、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を確保しておきましょう。
運転資金には、毎月の家賃、水道光熱費、人件費(スタッフを雇う場合)、広告費、消耗品費などが含まれます。1ヶ月あたり50万〜150万円程度を目安に計算してみてください。
開業スタイル別の費用比較
開業スタイルによって必要な費用は大きく変わります。ここでは3つのパターンをご紹介します。
自宅開業の場合:10万〜100万円程度
自宅の一部を施術スペースにする場合、物件取得費用がかからないため、大幅にコストを抑えられます。最低限の施術ベッド、タオル類、消耗品があれば始められます。ただし、生活空間と分離することや、看板の設置が可能かどうかなど、確認すべき点もあります。
テナント開業の場合:400万〜1,000万円程度
もっとも一般的な開業スタイルです。立地を選べる、集客がしやすい、などのメリットがある一方で、初期費用と毎月の固定費が大きくなります。
レンタルサロンでの開業:数万円〜
レンタルサロンは、時間貸しや月極めで借りられる施術スペースです。ベッドやタオルなどの備品が揃っていることが多く、初期費用をほとんどかけずに開業できます。まずは小さく始めて、軌道に乗ったらテナントへ移転するという方法も選択肢の一つです。
治療院開業に必要な資格と要件を確認しよう

治療院を開業するには、施術の種類によって必要な資格が異なります。ここでは、整骨院(接骨院)、鍼灸院、整体院それぞれに必要な資格と要件を解説します。
整骨院・接骨院の開業に必要な資格
整骨院(接骨院)を開業するには、「柔道整復師」の国家資格が必須です。柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫などの外傷に対して、手術や薬を使わずに施術を行う専門家です。
柔道整復師の資格取得方法
柔道整復師になるには、文部科学省が指定する4年制大学、または都道府県知事が指定する専門養成施設(3年以上)に通い、必要なカリキュラムを修了した後、国家試験に合格する必要があります。
施術管理者の要件
整骨院で健康保険を取り扱う(受領委任を行う)場合は、柔道整復師の資格に加えて「施術管理者」としての要件を満たす必要があります。2024年4月以降に届出する場合、3年間の実務経験と施術管理者研修の受講が必要です。
実務経験は、受領委任の取扱いを行う施術所での勤務経験が対象となります。複数の施術所での経験は合算できますが(上限2年)、受領委任の届出をしていない施術所での経験は認められないため注意が必要です。
鍼灸院の開業に必要な資格
鍼灸院を開業するには、「はり師」「きゅう師」の国家資格が必要です。鍼灸師は、鍼や灸を使って体のツボを刺激し、自然治癒力を高める施術を行います。
鍼灸師の資格取得方法
はり師・きゅう師になるには、専門学校や大学で3〜4年間学び、それぞれの国家試験に合格する必要があります。多くの方が両方の資格を同時に取得しています。
施術管理者の要件
鍼灸師として開業し、健康保険の受領委任を行う場合も、施術管理者の届出が必要です。1年間の実務経験と、施術管理者研修(16時間、2日間以上の講義)の受講が条件となっています。
整体院の開業には資格は必須ではない
整体院の開業には、法律上、資格は必須ではありません。ただし、資格がなくても施術の質を高め、お客様からの信頼を得るために、民間資格を取得している方も多くいらっしゃいます。
一方で、整体院では「整骨院」「接骨院」といった名称は使用できず、保険診療も行えません。すべて自費施術となります。
取得しておくと有利な資格
整体院を開業する場合も、以下のような国家資格を取得しておくと、施術の幅が広がり、差別化につながります。
あん摩マッサージ指圧師
国家資格で、手技によって体の不調を改善する施術ができます。屋号に「マッサージ」と使えるのは、この資格を持っている場合のみです。
柔道整復師・鍼灸師
保険診療を行いたい場合や、施術の幅を広げたい場合に有効です。複数の資格を持つことで、より多様なニーズに応えられるようになります。
治療院開業の準備|開業までのステップを徹底解説
ここからは、治療院を開業するための具体的な準備ステップを解説します。しっかりと計画を立てて、一つひとつ着実に進めていきましょう。
ステップ1:コンセプトと事業計画を立てる
開業準備の第一歩は、「どんな治療院を作りたいか」というコンセプトを明確にすることです。以下のような点を考えてみてください。
ターゲットを決める
どのような患者さんに来てほしいですか?スポーツをする方、デスクワークで肩こりに悩む方、産後のケアを求める女性、高齢者の方など、ターゲットによって施術内容や集客方法も変わってきます。
強みを明確にする
他の治療院との差別化ポイントは何ですか?特定の症状に強い、丁寧なカウンセリング、最新機器の導入、駅から近いなど、自院ならではの強みを考えましょう。
事業計画を作成する
売上予測、経費の見積もり、収支計画などを具体的な数字にして事業計画書を作成します。融資を受ける際にも必要になる重要な書類です。
ステップ2:立地・物件を選定する
治療院の成功を左右する重要な要素が立地です。以下のポイントを参考に物件を探しましょう。
ターゲットがいる場所を選ぶ
設定したターゲット層が多くいるエリアを選びましょう。オフィス街、住宅街、駅前、商業施設の近くなど、ターゲットによって最適な立地は異なります。
競合状況を調べる
周辺にどのような治療院があるか、どんなサービスを提供しているかを調査します。競合が多すぎる場所は避けるか、明確な差別化ポイントを持って勝負する必要があります。
視認性と入りやすさを確認する
通りから看板が見えるか、入口がわかりやすいか、入りやすい雰囲気かどうかも重要です。2階以上のテナントは家賃が安い反面、視認性が低くなる傾向があります。
ステップ3:資金調達を行う
物件が決まったら、必要な資金を調達します。治療院開業の資金調達には、いくつかの方法があります。
自己資金
開業資金の2〜3割程度は自己資金で用意しておくと、融資を受けやすくなります。計画的に貯蓄を進めましょう。
日本政策金融公庫の融資
創業者向けの融資として最もポピュラーな方法です。無担保・無保証人で利用でき、金利も比較的低いのが特徴です。融資を受けるには、しっかりとした事業計画書の作成が必要です。
銀行・信用金庫の融資
過去に取引実績がある場合は、高額な融資を受けられることもあります。ただし、日本政策金融公庫に比べて審査が厳しい傾向があります。
自治体の制度融資
市区町村によって異なる融資制度があり、金利が低く、比較的融資を受けやすいのが特徴です。お住まいの地域の制度を調べてみましょう。
ステップ4:内装工事・設備導入を行う
物件が決まり、資金調達の目処がついたら、内装工事と設備導入を進めます。
内装工事のポイント
保健所の構造設備基準を満たす必要があるため、事前に保健所に相談しておくことをおすすめします。施術室の広さ、換気設備、消毒設備などに基準があります。
設備・機器の選定
施術ベッド、物療機器、タオル類、消耗品などを準備します。開業当初は必要最小限にして、経営が軌道に乗ってから追加していく方法もあります。中古機器やリースの活用も検討してみてください。
ステップ5:各種届出・手続きを行う
開業にあたっては、さまざまな届出が必要です。次のセクションで詳しく解説しますが、主なものを挙げておきます。
保健所への開設届
整骨院・鍼灸院の場合は必須です。開設後10日以内に届出が必要です。
地方厚生局への届出
保険施術を行う場合、受領委任の届出が必要です。
税務署への開業届
個人事業主として開業する場合、開業届と青色申告承認申請書を提出します。
ステップ6:集客・宣伝活動を行う
開業に向けて、集客・宣伝活動も並行して進めましょう。
ホームページの作成
今の時代、ホームページは必須です。院の特徴、施術内容、料金、アクセス、院長のプロフィールなどを掲載しましょう。
Googleマイビジネスへの登録
Googleマップに表示されるようになり、近隣の方からの検索で見つけてもらいやすくなります。
SNSの活用
InstagramやLINEなど、ターゲット層が使っているSNSを活用しましょう。
チラシのポスティング
開業前後に近隣にチラシを配布するのも効果的です。
治療院開業の届出|必要な手続きをわかりやすく解説

治療院を開業する際には、複数の届出が必要です。届出先と必要書類を整理して、スムーズに手続きを進めましょう。
保健所への開設届(整骨院・鍼灸院の場合)
整骨院(接骨院)や鍼灸院を開業する場合、保健所への開設届が必要です。これは、施術所が構造設備基準を満たしているか、資格を持った施術者が従事しているかを確認するためのものです。
届出のタイミング
開設届は「開設後10日以内」に提出するのが原則です。ただし、保険施術を開業日から行いたい場合は、厚生局への届出に開設届の控えが必要になるため、スケジュールを調整する必要があります。
主な必要書類
・施術所開設届
・施術所の平面図
・周辺の地図
・柔道整復師(または、はり師・きゅう師)免許の写し
・(施術管理者になる場合)実務経験期間証明書の写し、施術管理者研修修了証の写し
事前相談のすすめ
保健所によって対応が異なる場合があるため、工事を始める前に平面図を持参して保健所に相談しておくことをおすすめします。構造設備基準を満たしていないと、開設届が受理されない可能性があります。
地方厚生局への届出(保険施術を行う場合)
整骨院や鍼灸院で健康保険を取り扱う場合、管轄の地方厚生局への届出が必要です。この届出をしないと、受領委任(患者さんに代わって保険請求を行うこと)ができません。
届出のタイミング
保健所への開設届が受理された後に申請します。保険施術の取扱開始日は、厚生局への申請日当日からとなるため、開業日に合わせてスケジュールを組むことが重要です。
主な必要書類
・受領委任の届出に関する書類一式
・保健所への開設届の控え(受付印があるもの)
・柔道整復師(または、はり師・きゅう師)免許の写し
・実務経験期間証明書の写し
・施術管理者研修修了証の写し
税務署への開業届の届出
個人事業主として開業する場合、税務署への届出が必要です。
開業届
「個人事業の開業・廃業等届出書」を、開業日から1ヶ月以内に管轄の税務署に提出します。
青色申告承認申請書
青色申告で確定申告を行うと、最大65万円の控除を受けられるなど、節税メリットがあります。青色申告を希望する場合は、開業日から2ヶ月以内(1月1日〜15日に開業した場合は3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を提出します。
都道府県税事務所への届出
「個人事業税の事業開始等申告書」を都道府県税事務所に提出します。提出期限は都道府県によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
その他の届出
共済組合への届出
国家公務員・地方公務員の保険を取り扱う場合は、それぞれの管轄機関に申請が必要です。
労災保険指定医療機関への届出
労災保険を取り扱う場合は、管轄する都道府県労働局に届出が必要です。
治療院開業に使える助成金・補助金を活用しよう
治療院の開業には、助成金や補助金を活用することで、資金面の負担を軽減できます。返済不要の資金援助なので、条件に当てはまる場合は積極的に活用しましょう。
小規模事業者持続化補助金
経済産業省が実施する補助金で、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する制度です。治療院の開業にも活用できます。
補助金の内容
・補助率:補助対象経費の3分の2
・補助上限:50万円〜200万円(申請枠によって異なる)
・対象者:小規模事業者(従業員5人以下など)
補助対象となる経費の例
・ホームページ制作費用
・チラシ・パンフレット作成費用
・看板設置費用
・自費施術向けの機器購入費用
・広告宣伝費
注意点
保険診療に使用する機器や備品は補助対象外となります。補助金を申請する際は、自費施術に関連する経費として明確に区分する必要があります。また、商工会議所または商工会の支援を受けて申請する必要があります。
IT導入補助金
ITツールの導入を支援する補助金です。治療院でも、予約システムや顧客管理システム、電子カルテなどの導入に活用できます。
補助金の内容
・補助率:費用の2分の1など(申請枠によって異なる)
・補助額:最大450万円(申請枠によって異なる)
補助対象となる経費の例
・予約管理システム
・顧客管理システム
・電子カルテ
・レセプトシステム
・パソコン・タブレットの購入費用
地域雇用開発助成金
雇用機会が不足している地域で事業所を設置し、従業員を雇用した場合に受けられる助成金です。
助成金の内容
・設置・整備費用と増加した従業員数に応じて支給
・支給額:50万円〜数百万円
対象となる経費
・事業所の工事費用(20万円以上)
・事業所の不動産購入費用(20万円以上)
・事業所の賃借費用(20万円以上)
ただし、対象地域が限定されているため、お住まいの地域が対象かどうか確認が必要です。
自治体独自の補助金・助成金
市区町村によっては、独自の創業支援補助金を設けている場合があります。内容は地域によってさまざまなので、お住まいの自治体の窓口や公式サイトで確認してみてください。
助成金・補助金を活用する際のポイント
情報収集は早めに
補助金には申請期限があるものが多いため、開業を決めたら早めに情報収集を始めましょう。
事業計画書をしっかり作成する
補助金の審査では、事業計画書が重要な判断材料になります。事業の目的、助成金の活用方法、期待される効果などを具体的に記載しましょう。
複数の制度を組み合わせる
目的が異なる補助金は併用できる場合もあります。ただし、同じ経費に対して重複して申請することはできないため、ルールを確認しましょう。
専門家に相談する
申請手続きが不安な場合は、商工会議所や税理士、中小企業診断士などの専門家に相談するのもおすすめです。
治療院開業資金の調達方法を詳しく解説

開業資金をすべて自己資金で賄える方は少数です。多くの場合、融資を活用して資金調達を行います。ここでは、治療院開業に活用できる主な資金調達方法を解説します。
日本政策金融公庫の創業融資
治療院の開業資金調達で最もポピュラーなのが、日本政策金融公庫の融資です。国が100%出資している金融機関で、創業者を積極的に支援しています。
メリット
・無担保・無保証人で利用できる
・民間金融機関より金利が低い
・融資のスピードが早い(約1ヶ月程度)
・創業時でも融資を受けやすい
融資を受けるためのポイント
自己資金を準備する
融資額の2〜3割程度の自己資金があると、審査が通りやすくなります。
実務経験をアピールする
治療院で勤務した経験があれば、開業後の成功確率が高いと判断され、融資を受けやすくなります。
事業計画書を作り込む
売上予測、経費の見積もり、収支計画などを具体的な数字で示した事業計画書を作成しましょう。1人あたりの平均単価と1日の来院数から売上を計算するなど、根拠を持った数字を示すことが重要です。
事前相談を活用する
日本政策金融公庫では事前相談制度を設けています。開業を決意した段階で早めに相談に行き、必要な準備を確認しておきましょう。
銀行・信用金庫からの融資
銀行や信用金庫でも創業融資を受けられる場合があります。過去に取引実績がある場合は、有利な条件で融資を受けられることもあります。
特徴
・日本政策金融公庫より審査が厳しい傾向がある
・取引実績や信用度が重要視される
・金額が大きい融資も可能
自治体の制度融資
市区町村が独自に設けている融資制度です。地域によって内容は異なりますが、金利が低く、比較的融資を受けやすいのが特徴です。
特徴
・金利が低い
・審査が比較的緩やか
・手続きが煩雑な場合がある
親族からの援助
自己資金が不足している場合、親族からの援助を受けることも選択肢の一つです。ただし、以下の点に注意しましょう。
・書面で金銭の貸し借りを明確にする
・年間110万円を超える贈与は贈与税の対象になる
鍼灸治療院の開業を成功させるためのポイント
鍼灸治療院の開業は、整骨院とは異なる点もあります。ここでは、鍼灸院ならではのポイントを解説します。
鍼灸院の開業資金の目安
鍼灸院の開業資金は、約500万〜1,000万円程度が目安とされています。施術所を持たずに訪問施術をメインにする場合は、物件取得費用を抑えることができます。
鍼灸院開業のメリット
美容鍼など自費メニューの展開
近年、美容鍼の需要が高まっています。自費メニューとして展開することで、収益の幅を広げることができます。
訪問施術との組み合わせ
高齢化社会の進展により、訪問鍼灸の需要も増えています。施術所と訪問を組み合わせることで、安定した収益を目指せます。
他の資格との組み合わせ
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師の資格も取得し、複合的な施術を提供している方も多くいます。施術の幅が広がり、差別化にもつながります。
鍼灸院開業の注意点
施術管理者の要件を確認する
健康保険の受領委任を行う場合は、1年間の実務経験と施術管理者研修の受講が必要です。
広告規制を理解する
鍼灸院の広告には、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律による規制があります。掲載できる内容が限定されているため、確認が必要です。
治療院開業を成功させるための集客のコツ
開業はゴールではなく、スタートです。開業後に安定した経営を続けるためには、継続的な集客が欠かせません。ここでは、治療院の集客で押さえておきたいポイントを紹介します。
ホームページを充実させる
今の時代、多くの方がネットで治療院を探します。ホームページは必須のツールです。
掲載したい情報
・院の特徴・コンセプト
・施術内容と料金
・院長・スタッフのプロフィール
・アクセス・営業時間
・患者さんの声(口コミ)
・予約方法
SEO対策も意識する
「〇〇市 整骨院」「〇〇駅 鍼灸院」など、地域名と業種の組み合わせで検索されることが多いため、これらのキーワードを意識してホームページを作成しましょう。
Googleマイビジネスを活用する
Googleマイビジネスに登録すると、Googleマップに院の情報が表示されるようになります。近隣の方が「整骨院」「鍼灸院」と検索したときに見つけてもらいやすくなります。
ポイント
・正確な住所・電話番号・営業時間を登録する
・写真を多く掲載する
・口コミへの返信をこまめに行う
SNSで情報発信する
Instagram、LINE、Facebookなど、ターゲット層に合ったSNSを活用しましょう。施術のビフォーアフター(許可を得て)、健康に関する豆知識、院の雰囲気などを発信することで、親近感を持ってもらえます。
口コミ・紹介を増やす
既存の患者さんからの口コミや紹介は、最も信頼性の高い集客方法です。満足度の高い施術を提供することはもちろん、口コミをお願いしたり、紹介割引を設けたりするのも効果的です。
地域密着の活動を行う
地域のイベントに参加したり、健康教室を開催したりすることで、地域の方に知ってもらうきっかけを作れます。長く愛される治療院になるためには、地域との関係づくりも大切です。
治療院開業でよくある失敗と対策
治療院の開業で失敗しないために、よくある失敗パターンとその対策を知っておきましょう。
資金計画の甘さ
失敗パターン
開業資金ばかりに目が行き、運転資金を十分に確保していなかった。開業後に売上が安定するまでの期間を乗り越えられなかった。
対策
最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を確保しておきましょう。また、保険施術の場合は入金まで時間がかかることを念頭に置いて計画を立てましょう。
立地選びの失敗
失敗パターン
家賃の安さだけで物件を選んだ結果、人通りが少なく集客に苦労した。
対策
家賃だけでなく、ターゲット層がいるか、視認性はあるか、競合状況はどうかなど、総合的に判断しましょう。
集客活動の不足
失敗パターン
「良い施術をしていれば患者さんは自然と来る」と考え、集客活動をしなかった。
対策
開業前からホームページを作成し、SNSでの発信を始めましょう。開業後も継続的に集客活動を行うことが大切です。
差別化ポイントの不明確さ
失敗パターン
周辺の治療院と同じようなサービスを提供し、選ばれる理由がなかった。
対策
自院ならではの強みを明確にし、ターゲット層に響くメッセージを発信しましょう。
まとめ|治療院開業の夢を現実に
ここまで、治療院開業のための完全ロードマップとして、費用・資格・準備・届出・助成金・資金調達まで、幅広く解説してきました。
この記事のポイント
開業費用
治療院の開業費用は400万〜1,000万円程度が目安。自宅開業なら数十万円から可能。運転資金として3〜6ヶ月分を確保しておくことが重要。
必要な資格
整骨院は柔道整復師、鍼灸院は、はり師・きゅう師の国家資格が必要。保険施術を行う場合は施術管理者の要件(実務経験・研修)も満たす必要がある。整体院は資格不要だが、差別化のために資格取得を検討するのもおすすめ。
開業準備のステップ
コンセプト・事業計画の作成→立地・物件の選定→資金調達→内装工事・設備導入→各種届出→集客活動の順で進める。
必要な届出
保健所への開設届、地方厚生局への受領委任届出、税務署への開業届など、複数の届出が必要。スケジュールを立てて計画的に進める。
助成金・補助金
小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金などを活用することで、資金面の負担を軽減できる。
資金調達
日本政策金融公庫の創業融資が最もポピュラー。自己資金を2〜3割準備し、しっかりとした事業計画書を作成することが融資成功のポイント。
次のステップへ
治療院の開業は、準備することがたくさんあります。しかし、一つひとつ着実に進めていけば、必ず開業の日を迎えることができます。
「自分の治療院を持ちたい」という夢を持っている方は、まずは情報収集から始めてみてください。この記事が、あなたの開業準備の第一歩となれば幸いです。
開業に関する具体的な疑問や不安がある場合は、日本政策金融公庫の創業ホットライン、地域の商工会議所、開業支援を行っている団体などに相談してみることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、より確実に開業準備を進められるでしょう。
あなたの治療院開業の成功を心よりお祈りしております。

