美容室のカウンセリングで売上アップのコツ。リピートにつながる手順とは?

美容師のカウンセリングは、リピート顧客を増やすことにつながる、というのはなんとなく感じている方も多いと思います。
カウンセリングは、お客様の理想のヘアスタイルを叶えるために欠かせないプロセスです。
丁寧なカウンセリングができれば、お客様の満足度が上がり、リピート率の向上や売上アップにつながります。逆に、カウンセリングが不十分だと「思っていた仕上がりと違う」というクレームが発生し、せっかくの技術も活かしきれません。
この記事では、美容室経営者や美容師の方に向けて、カウンセリングの重要性から具体的な手順、リピート率を上げるためのコツまで、実践的な内容をわかりやすく解説していきます。
カウンセリング力を高めて、お客様に愛されるサロンを目指しましょう。
美容室のカウンセリングはなぜ重要なのか

まず、美容室におけるカウンセリングがなぜこれほど重要なのかを理解しておきましょう。カウンセリングは単なる事前確認ではなく、お客様との信頼関係を築く大切な時間です。
お客様の満足度を左右する重要なプロセス
美容室では、どんなに高い技術を持っていても、お客様の希望を正確に把握できなければ満足していただけません。カウンセリングを通じて、
お客様が「どんな髪型にしたいのか」「どんな悩みを抱えているのか」をしっかりと聞き出すことで、理想に近い仕上がりを実現できます。
実際、お客様が美容室選びで重視するポイントを調査したアンケートによると、65.3%ものお客様が「毎回同じサービスではなく、自分の気持ちや状況に応じたサービスを提供してくれること」と回答しています。
つまり、お客様一人ひとりの状況を理解し、それに合わせた提案をすることが求められているのです。
リピート率と売上に直結する
カウンセリングが丁寧に行われると、お客様は「この美容師さんはちゃんと話を聞いてくれる」「自分のことをわかってくれている」と感じます。この信頼関係が、リピートにつながります。
逆に、カウンセリングが不十分だと「希望と違う髪型になった」「好みのスタイルではない」といった不満が生まれ、2度目の来店がなくなってしまうことも。
新規のお客様を獲得するコストは既存のお客様を維持するコストの5倍とも言われていますから、リピート率を高めることは売上アップに直結します。
クレームを防ぐためにも不可欠
美容室でよくあるクレームの多くは、「イメージと違った」「こんなはずじゃなかった」というコミュニケーション不足から生まれます。カウンセリングで事前にしっかりとイメージを共有しておけば、こうしたトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、カットの長さやカラーの明るさなど、お客様と美容師で認識のズレが起きやすいポイントは、視覚的に確認しながら進めることが大切です。
美容室のカウンセリングの基本的な流れ
それでは、実際に美容室でどのようにカウンセリングを進めていけばよいのでしょうか。基本的な流れを順を追って説明していきます。
1. 挨拶と自己紹介で第一印象を良くする
初めて来店されたお客様には、カウンセリングの前に必ず挨拶と自己紹介を行いましょう。
人は最初に受けた印象がその後のイメージに強く影響する傾向があります(初頭効果)。第一印象が良ければ、カウンセリングがスムーズに進み、施術や接客に対する満足度も高まります。
明るい笑顔と丁寧な言葉遣いを心がけ、「本日担当させていただく〇〇です。よろしくお願いいたします」と一言添えるだけで、お客様の緊張もほぐれます。
2. カウンセリングシートで基本情報を収集する
次に、カウンセリングシートに記入してもらいましょう。待ち時間を利用してお客様自身に記入してもらうことで、効率よく詳細な情報を得ることができます。
カウンセリングシートには以下のような項目を含めるとよいでしょう。
基本情報として、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報を記入してもらいます。これらは顧客管理に必須の情報であり、リマインドメールやキャンペーンのお知らせを送る際にも必要です。
髪質や状態については、髪の太さ(太い・普通・細い)、髪の量(多い・普通・少ない)、くせの有無(強い・少し・ない)、頭皮の状態(乾燥・普通・脂性)などをチェック形式で確認します。
髪の悩みに関しては、乾燥やパサつき、広がり、うねり、ボリューム不足、白髪、ダメージなど、お客様が気になっている点を具体的に書いてもらいましょう。
希望のヘアスタイルについては、カット、カラー、パーマなど、どのメニューを希望しているか、どんな雰囲気にしたいかを記入してもらいます。
美容室への通う頻度や過去の施術履歴なども、今後の提案に役立つ情報です。
3. 口頭でのカウンセリングで詳細を聞き出す
カウンセリングシートを確認したら、次は口頭でさらに詳しく聞いていきます。ここでのポイントは、お客様との距離感と目線です。
施術用の椅子にお客様に座っていただき、美容師は半歩斜め後ろあたりに座って、鏡越しにお客様の顔を見ながら話を聞きましょう。目線の位置が鏡越しに合うようにすることで、お客様は「ちゃんと聞いてくれている」と感じやすくなります。
話を聞くときは、相槌を打ちながらしっかりと聞いていることを伝えます。ただし、お客様の話を途中で遮ったり、悩む表情ばかり見せたりすると、マイナスのイメージを持たれてしまうので注意が必要です。
4. 希望のヘアスタイルを具体的に確認する
お客様が「どんな髪型にしたいのか」を具体的に聞き出します。
カットなら切る長さ、ボリューム、スタイル、カラーなら明るさ、色味、ホームカラーの有無など、できるだけ詳しく確認しましょう。
ここで大切なのは、美容師とお客様の感覚のズレを防ぐことです。例えば「5センチ切りたい」という希望があった場合、実際に髪先から5センチの長さを指で示して、目で見て確認できる時間を取りましょう。
また、お客様が持ってきたヘアカタログやSNSの写真は、理想のイメージを共有する貴重な手がかりです。
写真を見せてくれた場合は、「素敵な写真をありがとうございます」とまず肯定し、その後で「この写真のどの部分が気に入っていますか」と具体的に聞いていきます。
5. 髪の悩みや気になることを聞く
お客様が抱える髪の悩みは本当にさまざまです。
「毎日ちゃんとお手入れしているのにパサパサする」「くせ毛でいつもスタイリングに時間がかかる」「髪の量が左右で違う」など、一人ひとり違う悩みがあります。
実際、来店されるお客様の7割以上が何らかの髪の悩みを抱えているとも言われています。カウンセリングできちんと聞いて把握することで、それに対応した施術や提案ができるようになります。
6. 普段のヘアケアやスタイリング方法を確認する

自宅でのヘアケアやスタイリングの状況を聞いておくことも大切です。朝のスタイリングに時間をかけられるか、どんなスタイリング剤を使っているか、ドライヤーの使い方はどうかなど、日常のライフスタイルを把握しておきましょう。
忙しい朝にスタイリングの時間が取れない方には、乾かすだけで形が決まりやすいカットを提案するなど、お客様のライフスタイルに合わせた提案ができます。
7. アレルギーや健康状態を確認する
忘れてはいけないのが、お客様の健康状態やアレルギーの確認です。
アレルギーがあるお客様には使える薬剤が限られているため、事前に必ず確認しておきましょう。
妊娠中や授乳中、持病がある場合なども、施術に影響する可能性があるため、カウンセリングシートに記入欄を設けておくと安心です。
8. 施術内容・料金・時間を確認する
カウンセリングの最後に、実際に行う施術の内容、かかる時間、料金を必ず確認しましょう。特に、予約時の内容よりも料金が上がる場合は、必ず事前にお客様に伝えて了承を得ることが大切です。
「髪の状態を見せていただいたところ、〇〇のトリートメントを追加するともっと理想の仕上がりに近づけると思います。追加で〇〇円かかりますが、いかがでしょうか」と丁寧に提案します。
ただし、初回のお客様に予約時より大幅に価格が上がるメニューを提案するのは避けた方が無難です。
「高いメニューを勧めてくる美容室」と思われて敬遠されてしまう可能性があります。価格の高い提案は、信頼関係ができてからの方がおすすめです。
リピート率を上げるカウンセリングの6つのコツ
基本的な流れを押さえた上で、さらにリピート率を高めるためのカウンセリングのコツを紹介します。
1. お客様の希望を丁寧にくみ取る
カウンセリングで最も大切なのは、お客様の希望や要望を正確に把握することです。
お客様の最初の一言が第一の希望ですから、必ずカルテに書き留めましょう。
特に新規のお客様の場合は、とにかく深くまで聞き出すことが重要です。どんな雰囲気にしたいのか、どんなシーンで活躍する髪型にしたいのか、過去にどんな失敗があったのかなど、会話を重ねながら本当の希望を引き出していきます。
2. お客様を決して否定しない
お客様が持ってきたヘアスタイルの写真や希望に対して、否定的な言葉を使わないことが大切です。「これは難しいですね」「この髪質では無理ですよ」といった言い方は、お客様を傷つけてしまいます。
まずは「素敵なスタイルですね」「この雰囲気、とてもお似合いになると思います」と肯定してから、「ただ、今の髪の状態だと少し時間がかかるかもしれません」「こちらのスタイルも近い雰囲気で、今の髪質に合わせやすいと思います」と代替案を提案しましょう。
3. できないことははっきりと伝える
お客様の希望をすべて叶えたい気持ちはわかりますが、髪質やダメージの状態によっては難しい施術もあります。無理に希望を受け入れて失敗するよりも、できないことは正直に伝えた方が信頼につながります。
その際は、「なぜできないのか」を専門用語を使わずにわかりやすく説明し、「では、どうすれば理想に近づけるか」という代替案を必ず提示しましょう。
4. 施術中もこまめに確認する

カウンセリングで共有したイメージも、施術が進むにつれてズレが生じることがあります。
カットの途中で一度お客様に鏡を見てもらい、長さやバランスを確認してもらうことで、仕上がりの満足度が格段に上がります。
「今この辺りまでカットしましたが、長さはいかがでしょうか」と声をかけることで、お客様も安心して施術を受けられます。
5. お客様が話しやすい雰囲気を作る
カウンセリングでは、美容師が一方的に質問するのではなく、お客様が話しやすい雰囲気を作ることが大切です。笑顔で相槌を打ち、共感する姿勢を見せることで、お客様も本音を話しやすくなります。
また、お客様が話している途中で遮らないように注意しましょう。「この人は私の話をちゃんと聞いてくれているのかな」と不安に思われてしまいます。
6. カウンセリング内容をスタッフ全員で共有する
カウンセリングで得た情報は、スタッフ全員で共有しておくことが重要です。次回来店時に別のスタッフが対応した場合でも、前回の施術内容やお客様の好みを把握していれば、「覚えてくれていたんだ」という安心感につながります。
この記録は、カルテやデジタル管理システムを活用して、しっかりと残しておきましょう。
お客様の髪に関することだけでなく、ライフスタイルや嗜好、今後のイベントや予定なども記録しておくと、次回の会話のきっかけになります。
施術後のアフターカウンセリングも忘れずに
施術が終わった後も、カウンセリングは続きます。施術後のアフターカウンセリングも、お客様の満足度を高める大切な要素です。
ホームケアやスタイリング方法をアドバイスする
自宅で美容室のスタイリングを再現できることも、お客様の満足度に大きく関係しています。
ヘアスタイルを維持しやすいよう、ヘアケアやスタイリング、ドライヤーのかけ方などをアドバイスしましょう。
「朝はこのように乾かしていただくと、形が決まりやすいですよ」「このあたりにワックスを少しつけると、動きが出ます」など、具体的に伝えることで、お客様も自宅で再現しやすくなります。
商品の押し売りは避ける
ただし、商品をおすすめするのは極力慎重に行った方がよいでしょう。特に初めて来店したお客様に必要以上の商品提案をすると、「この美容室は不要な商品ばかり勧めてくる」というイメージを持たれるリスクがあります。
商品をおすすめするのは、お客様との信頼関係を築けてからにしましょう。アドバイスは無料で行い、お客様が自ら「このシャンプー、どこで買えますか」と聞いてきたときに紹介する方が、信頼を得やすくなります。
次回の来店を提案する
施術後のカウンセリングでは、次回の来店時期や施術内容も提案しましょう。「次回は〇ヶ月後くらいにカラーのメンテナンスをおすすめします」「次回はカットと一緒にトリートメントもいかがでしょうか」と具体的に伝えることで、お客様も計画を立てやすくなります。
カウンセリングへの苦手意識を克服する方法
カウンセリングが重要だとわかっていても、「人と話すのが苦手」「何を聞けばいいかわからない」と悩む美容師の方も少なくありません。ここでは、カウンセリングへの苦手意識を克服するための方法を紹介します。
聞くことに専念する
カウンセリングで大切なのは、美容師が話すことではなく、お客様の話を聞くことです。自
分が何を提案しようかと考えるよりも、まずはお客様の言葉に耳を傾けることに集中しましょう。
適切な距離感を保ち、お客様が話しやすい雰囲気を作ることで、自然と会話が弾んでいきます。
カウンセリングのシナリオを作る
何を聞けばいいかわからないという方は、あらかじめカウンセリングのシナリオ(トークスクリプト)を作っておくのがおすすめです。
「まず挨拶をして、次にカウンセリングシートを確認する。その後、希望のヘアスタイルを聞いて、髪の悩みを聞く」というように、流れを決めておけば、スムーズに進められます。
視覚で共有する
仕上がりのイメージは、言葉だけでなく写真などで視覚的に確認することが大切です。
ヘアカタログやタブレット端末を活用して、お客様と一緒に画面を見ながら「この長さですか」「この色味ですか」と確認していきましょう。
視覚で共有することで、お客様との認識のズレを防ぐことができます。
表情や挨拶で好印象を与える
カウンセリングが苦手な方ほど、表情が硬くなりがちです。まずは笑顔と明るい挨拶を心がけるだけでも、お客様に与える印象は大きく変わります。
「本日はご来店ありがとうございます」「今日はどんなスタイルにしましょうか」と明るく声をかけることで、お客様もリラックスして話しやすくなります。
カウンセリングシートをデジタル化して効率アップ
カウンセリング内容や施術履歴をスタッフ全体で共有したいけれど、「紙カルテだと記入が面倒」「管理も大変」と感じている方も多いのではないでしょうか。
電子カルテの活用がおすすめ
そんなときに便利なのが、電子カルテシステムです。初回に取得する個人情報などをお客様のスマホから入力してもらえるため、紙カルテを見てパソコンに入力するという手間がかかりません。
過去の施術内容もすぐに確認でき、写真もアップできるので、カラーやスタイルのイメージ共有にもぴったりです。スタッフ同士で情報をスムーズに共有できるため、お客様に「ちゃんと覚えてくれている」と感じてもらいやすく、信頼関係づくりにもつながります。
予約システムとの連携で顧客管理を一元化
予約管理システムと電子カルテを連携させることで、予約情報と顧客情報を一元管理できます。お客様の予約履歴や来店頻度、施術内容などのデータを蓄積しておけば、マーケティング施策にも活用できます。
例えば、「前回の来店から3ヶ月経過したお客様にリマインドメールを送る」「誕生月のお客様にクーポンを配信する」といった施策も自動化できるため、業務効率が大幅に向上します。
カウンセリングで売上をアップさせる具体的な方法
ここまでカウンセリングの基本と、リピート率を上げるコツを紹介してきました。最後に、カウンセリングを通じて売上をアップさせる具体的な方法をお伝えします。
客単価を上げる提案をする
カウンセリングの中で、お客様の髪の状態に合わせた追加メニューを提案することで、客単価を上げることができます。ただし、押し売りにならないよう、お客様のメリットをしっかりと説明することが大切です。
「今日はカットだけのご予約でしたが、髪のダメージが少し気になります。トリートメントを追加すると、仕上がりのツヤ感が格段に上がりますよ」というように、お客様にとっての価値を伝えましょう。
次回予約を促す
施術後のアフターカウンセリングで、次回の来店時期を提案し、その場で予約を取ってもらうことで、リピート率が大幅に向上します。
「カラーは大体2ヶ月くらいで色が落ちてきますので、次回は〇月頃がおすすめです。今お決めいただけますか」と具体的に提案しましょう。
顧客情報を活用してパーソナライズする
カウンセリングで得た情報をしっかりと記録し、次回来店時に活用することで、お客様は「自分のことを覚えてくれている」と特別感を感じます。
「前回、お子さんの入学式があるとおっしゃっていましたが、いかがでしたか」「前回のカラー、色持ちはどうでしたか」と会話を続けることで、お客様との関係性がより深まります。
紹介を促す仕組みを作る
満足度の高いお客様は、自然と友人や家族に美容室を紹介してくれます。カウンセリングの最後に「もしお知り合いで美容室をお探しの方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください」と一言添えるだけでも、紹介につながる可能性が高まります。
紹介割引やポイント制度などのインセンティブを用意しておくと、さらに紹介が促進されます。
まとめ:カウンセリングで売上アップとリピート率向上を実現しよう
美容室におけるカウンセリングは、お客様の満足度を左右する非常に重要なプロセスです。技術力がどんなに高くても、カウンセリングが不十分では理想の仕上がりを実現できず、リピートにもつながりません。
この記事で紹介した基本的な流れとコツを実践することで、お客様との信頼関係を築き、リピート率と売上の向上を実現できます。具体的には、挨拶と自己紹介で第一印象を良くし、カウンセリングシートで効率的に情報を収集し、口頭で詳細を聞き出すという流れを大切にしましょう。
また、お客様を決して否定せず、できないことははっきりと伝え、施術中もこまめに確認することで、認識のズレを防ぐことができます。カウンセリング内容はスタッフ全員で共有し、次回来店時にも活用することで、お客様に「覚えてくれている」という安心感を与えることができます。
カウンセリングが苦手な方は、まず聞くことに専念し、シナリオを作り、視覚で共有する方法を試してみてください。電子カルテや予約システムを活用することで、業務効率も大幅に向上します。
丁寧なカウンセリングを通じて、お客様に愛される美容室を目指しましょう。お客様の笑顔と「またお願いします」という言葉が、あなたのサロンの成長につながっていきます。

