美容室の開業までの流れを解説。集客に失敗しないために行う準備まとめ

「いつかは自分の美容室を開業したい」と考えている美容師の方へ。
自分らしいサロンを持ち、理想のスタイルでお客様に喜んでいただきたい。そんな夢を実現するためには、開業までの流れをしっかりと理解し、計画的に準備を進めることが大切です。
しかし、美容室の開業には多くの手続きや準備が必要で、何から始めればいいのか迷ってしまう方も少なくありません。
資金はどのくらい必要なのか、どんな資格が必要なのか、保健所への手続きはどうすればいいのか。こうした疑問を一つひとつ解決していくことが、開業成功への第一歩となります。
この記事では、美容室の開業を目指す方に向けて、開業までの具体的な流れから必要な資格、資金調達の方法、そして集客に失敗しないための準備まで、わかりやすく解説します。2025年以降、最新の情報をもとに、実践的な内容をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
美容室の開業に必要な資格とは

美容室を開業するためには、まず必要な資格を取得しておく必要があります。
美容師免許は当然必要ですが、それ以外にも開業する規模によって必要となる資格があります。ここでは、美容室開業に必要な2つの資格について詳しく見ていきましょう。
美容師免許は開業の必須条件
まず当然ではありますが、念の為記載をしておきます。美容室を開業して美容師として働くためには、ご存じの通り美容師免許が必要です。
これは理容師法に基づいて発行される国家資格で、厚生労働省が指定する美容師養成施設で所定の課程を学び、年に2回行われる美容師国家試験に合格することで取得できます。
国家試験には実技試験と学科試験があり、両方に合格した後、申請手続きを行うことで免許が交付されます。開業時には保健所へ届け出をする際にも美容師免許の提出が求められますので、必ず取得しておく必要があります。
美容師法により、ヘアカット、カラー、パーマ、メイク、まつ毛エクステンション、ウェットヘッドスパなどの美容行為は、国家資格を持つ美容師だけが行える独占業務となっています。
そのため、美容室を開業する際には、必ず美容師免許を持っていることが前提条件となります。
管理美容師免許はスタッフを雇う際に必要
美容室を一人で営業する場合は美容師免許のみで開業が可能ですが、自分以外に1名以上の美容師やスタイリストを雇う場合は「管理美容師免許」の取得が必要になります。
これは法律で定められており、従業員を雇い常時2人以上で営業する場合、美容室の衛生管理のために管理美容師を置かなければなりません。
管理美容師免許を取得するには、美容師として3年以上の実務経験があることが条件です。
その上で、都道府県知事が指定した講習会を受講することで資格を取得できます。講習期間は通常2〜3日程度で、衛生管理に関する知識を学びます。
将来的にスタッフを雇用する予定がある場合は、開業前に管理美容師免許を取得しておくとスムーズです。すでに3年以上の実務経験がある方は、早めに講習を受けておくことをおすすめします。
美容室開業までの全体的な流れ
美容室を開業するには、さまざまな準備を計画的に進めていく必要があります。
開業までには最短でも2か月半、余裕を持って準備する場合は半年から1年程度かかることが一般的です。ここでは、開業までの全体的な流れを順を追って解説していきます。
事前準備でコンセプトと事業計画を固める
美容室開業の第一歩は、事前準備から始まります。まず、自分がどのような美容室を出店したいのかを明確にするため、コンセプト設定が重要になります。
どんなサービスを、誰に対して、どのように提供するのか。この3つをはっきりさせておくことで、その後の準備がスムーズに進みます。
コンセプトを考える際には、ターゲット顧客を具体的にイメージしましょう。性別、年代、家族構成、趣味、悩みなどを想定して、「自宅でのケアを楽にしたい女性」「カラーを頻繁にする女性」「くせ毛に悩む女性」といった具体的なペルソナを設定すると、提供すべきサービスや店舗の雰囲気が見えてきます。
また、業界全体の流行やトレンド、エリアごとの人口や世帯数など、市場調査も必要です。開業を予定しているエリアにどのような競合店があるのか、どんなニーズがあるのかを把握することで、差別化のポイントが明確になります。
事業計画書の作成も欠かせません。
事業計画書では、
オーナーの経歴、開業動機、サービス内容、必要な資金、事業の見通し
などを文章や具体的な数値で表します。これは資金調達の際に必要なだけでなく、経営に悩んだ際にも軸となる重要な書類ですので、しっかりと内容を検討して作成しましょう。
店舗物件の調査と選定
コンセプトが固まったら、次は店舗物件を探します。物件選びは美容室の成功を左右する重要なポイントです。
ターゲット顧客に合わせて、繁華街なのか、ビジネス街なのか、それとも住宅街なのか、開業の立地を慎重に検討しましょう。
物件探しの方法としては、不動産情報サイトで検索するだけでなく、実際に街を歩いて掘り出し物件を探すことも効果的です。ネット情報だけでは見つからない好条件の物件が見つかることもあります。
物件には大きく分けて「スケルトン物件」と「居抜き物件」があります。
スケルトン物件は内装が何もない状態で、自由にデザインできる反面、内装工事費用が高くなる傾向があります。
一方、居抜き物件は前のテナントの設備を引き継げるため、初期費用を抑えられるメリットがありますが、自分のコンセプトに合わせた改装が必要になることもあります。
物件を選ぶ際には、保健所の基準を満たせるかどうかも重要です。美容室として営業するには、床の広さや衛生設備など、細かな基準をクリアする必要があります。
気になる物件が見つかったら、必ず内覧を行い、専門家にも相談しながら判断することをおすすめします。
資金調達で開業費用を確保する
美容室の開業には、規模によって異なりますが、一般的に700万円から1,500万円程度の資金が必要です。この全額を自己資金で用意できる方は少なく、ほとんどの方が日本政策金融公庫や銀行などからの融資を利用しています。
資金調達の方法としては、まず日本政策金融公庫からの融資が挙げられます。
日本政策金融公庫は国の政策金融機関で、経営実績がない創業時の融資を積極的に行っています。開業費用の25〜30%程度の自己資金があれば、融資を受けられる可能性が高まります。
融資を受ける際には、事業計画書が必須となります。しっかりとした事業計画を示すことで、金融機関からの信頼を得ることができます。また、融資希望の方向けに、専門家のサポートを受けながら創業計画を考えることで、融資の可決率を高めることもできます。
銀行などの民間金融機関からの融資も選択肢の一つですが、創業時は実績がないため審査が厳しくなることがあります。自治体の融資制度もありますが、受給までに時間がかかることが多いため、早めの相談を心がけましょう。
内装工事と設備導入を進める

物件が決まり、資金調達の目処が立ったら、内装工事と設備導入に取りかかります。
美容室の内装工事は、保健所や消防署の基準を満たす必要があるため、工事を始める前に必ず両機関へ事前相談を行いましょう。
内装工事では、作業スペースの面積と椅子の台数、待合スペース、シャンプー台などの洗髪設備、消毒場所、床・壁の材質、照明・換気設備など、細かな基準が定められています。
これらの基準を満たしていないと営業許可が下りませんので、設計段階から慎重に計画を立てる必要があります。
内装業者を選ぶ際には、必ず複数社から見積りを取って比較検討しましょう。費用はピンキリで、同じ工事内容でも業者によって大きく差が出ることがあります。見積り時には、保健所や消防署の基準を満たす内装にする必要があることを必ず伝えておきましょう。
小規模サロン(10坪、2セット、1シャンプー)の場合、内装工事費用は税込み330万円程度が一つの目安となります。ただし、デザインや使用する材料によって費用は大きく変動しますので、予算に合わせて計画を立てることが大切です。
美容器具と備品の購入
内装工事と並行して、美容器具や備品の購入も進めます。
セット面やシャンプー台などの大型什器、カット用のハサミやドライヤー、カラー剤やパーマ剤などの美容消耗品、タオルや清掃用具などの備品類など、開業に必要なものは多岐にわたります。
美容器具の調達には、美容ディーラーとの契約が一般的です。日本には大手美容ディーラーがいくつかあり、それぞれ取り扱う商品や価格帯が異なりますので、複数のディーラーを比較検討することをおすすめします。
美容機器のリースを利用する方法もあります。初期費用を抑えられるメリットがありますが、金利が発生するため、トータルコストを考慮した上で判断しましょう。
一般的に、リースよりも購入の方が長期的には費用を抑えられることが多いです。
スタッフ採用と教育
スタッフを雇用する予定がある場合は、オープン前に採用活動を行います。
採用活動を始める時期は、開業の3か月以内が最も多く、この時期から募集を始める美容室が全体の約70%を占めています。
スタッフ採用では、技術力はもちろん大切ですが、お店のコンセプトに共感してくれる人材を選ぶことも重要です。面接では、応募者の人柄やコミュニケーション能力、お客様への接し方なども確認しましょう。
また、知り合いや元同僚を誘って開業するケースもありますが、仲が良いからといって必ずうまくいくとは限りません。お店の方針や役割分担、報酬体系などをしっかりと話し合い、お互いの認識を合わせておくことが大切です。
保健所と消防署での手続きと検査
美容室を開業するためには、保健所の許可と消防署の検査を受けることが法律で義務付けられています。
これらの手続きを怠ると営業できませんので、確実に対応する必要があります。ここでは、それぞれの手続きの流れと注意点について詳しく解説します。
保健所での美容所開設届の提出
美容室を開業する際には、保健所に「美容所開設届」を提出し、保健所職員による立入検査を受ける必要があります。この手続きは営業開始の前に必ず完了させておかなければなりません。
保健所での手続きは、以下の流れで進みます。
まず、内装工事を始める前に、管轄の保健所へ事前相談に行きます。この段階で、店舗の平面図を持参し、保健所の基準を満たす設計になっているかを確認してもらいましょう。事前相談をしておくことで、工事後に基準を満たしていないことが判明するトラブルを防げます。
内装工事が完了したら、正式に開設届を提出します。
提出時には、美容所開設届、施設の構造設備の概要、施設の平面図、従業員名簿、美容師免許を持つ従業員の医師診断書、法人の場合は登記事項証明書、外国人従業員がいる場合は住民票の写しなどが必要です。
開設届を提出すると、保健所職員による立入検査の日程が決まります。
立入検査では、作業スペースの面積、シャンプー台の設置状況、消毒設備の有無、床・壁の材質、照明や換気設備などが細かくチェックされます。基準を満たしていれば、確認書が発行され、晴れて営業が可能になります。
検査には手数料がかかり、金額は自治体によって異なりますが、一般的に1〜2万円程度です。検査料金の支払いは、開設届を提出する際に行います。
消防署での消防検査の依頼
保健所の手続きと並行して、消防署での消防検査も受ける必要があります。
これは店舗の防災設備が基準を満たしているかを検査するもので、「火災報知器」や「消火器」などの消防機材が適切に設置・作動するかなどがチェックされます。
消防検査も、内装工事を始める前に消防署へ事前相談を行うことが重要です。
物件の規模や構造によって必要な防災設備が異なるため、設計段階で確認しておくことで、後からの追加工事を防げます。
内装工事が完了したら、消防署に連絡して現地調査の日程を決めます。
調査当日は、消防職員が店舗を訪問し、防災設備の設置状況や作動確認を行います。基準を満たしていれば、検査済証が発行されます。
保健所と消防署、両方の許可が下りて初めて、美容室として営業を開始できます。どちらか一方でも許可が下りていない状態では営業できませんので、スケジュールに余裕を持って手続きを進めましょう。
税務署と労働関連の手続き
美容室を開業したら、税務署への届出や、スタッフを雇う場合の労働保険の手続きも必要です。これらの手続きを適切に行うことで、税制上の優遇措置を受けられたり、従業員の福利厚生を整えたりすることができます。
税務署への開業届の提出
個人事業主として美容室を開業する場合、開業してから1か月以内に管轄の税務署へ開業届を提出する必要があります。
正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。
開業届を提出すると、青色申告の確定申告を行うことで最大65万円の特別控除を受けることができます。青色申告をするためには、開業届とともに「青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。
青色申告承認申請書は、開業日から2か月以内、または1月1日から3月15日までに提出する必要があります。
また、スタッフを雇用する場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」も提出します。これは、従業員に給与を支払う事業所であることを届け出る書類です。さらに、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すると、源泉所得税の納付を年2回にまとめることができ、事務負担が軽減されます。
法人として開業する場合は、「法人設立届出書」を提出します。
また、都道府県税事務所や市町村役場にも「事業開始等申告書」や「法人設立・設置届出書」を提出する必要があります。
従業員を雇う際の労働保険の手続き
スタッフを雇用する場合は、労働保険と社会保険の手続きも必要です。
労働保険には労災保険と雇用保険があり、社会保険には健康保険と厚生年金保険があります。
労災保険は、従業員が業務中や通勤中に怪我や病気をした場合に補償する保険です。従業員を1人でも雇用する場合は加入が義務付けられており、労働基準監督署で手続きを行います。
雇用保険は、従業員が失業した場合に給付を受けられる保険です。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある従業員が対象となります。公共職業安定所(ハローワーク)で手続きを行います。
社会保険は、法人の場合や従業員が5人以上いる個人事業主の場合に加入義務があります。年金事務所で手続きを行い、健康保険と厚生年金保険に同時に加入します。
これらの手続きは複雑で時間もかかるため、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。適切に手続きを行うことで、従業員が安心して働ける環境を整えることができます。
美容室の開業にかかる資金の相場
美容室の開業には、さまざまな費用がかかります。
規模やエリア、内装のグレードによって金額は大きく変動しますが、一般的な相場を知っておくことで、資金計画を立てやすくなります。ここでは、開業資金の内訳と相場について詳しく見ていきましょう。
開業資金の相場は規模によって異なる
美容室の開業資金は、店舗の規模によって大きく異なります。
一人で営業する小規模サロンの場合、700万円から1,000万円程度が相場です。一方、複数のスタッフを雇用し、セット面が3つ以上ある中規模サロンの場合は、1,500万円から2,000万円程度が必要になります。
2025年の最新データによると、美容室を開業した方の平均的な開業費用は、立地やコンセプトによって異なりますが、自己資金200万円に加えて融資を受けるケースが最も多くなっています。自己資金だけで全額を賄うケースは稀で、ほとんどの方が何らかの形で資金調達を行っています。
開業費用を抑えたい場合は、居抜き物件を利用したり、自宅の一部を改装して自宅サロンとして開業したりする方法もあります。
自宅サロンの場合、物件取得費用や家賃が不要になるため、300万円から500万円程度で開業できることもあります。
物件取得費用
美容室の開業資金の中で大きな割合を占めるのが、物件取得費用です。
テナント物件を借りる場合、敷金・保証金、前家賃、仲介手数料などが必要になります。
敷金は家賃の3〜6か月分、保証金は家賃の6〜12か月分が一般的です。さらに、契約時には前家賃として1〜2か月分の家賃を支払うことが多く、仲介手数料として家賃の1か月分程度がかかります。
例えば、家賃が月15万円の物件の場合、敷金45万円、保証金90万円、前家賃30万円、仲介手数料15万円で、合計180万円程度の初期費用が必要になります。
物件によって条件は異なりますので、契約前にしっかりと確認しましょう。
内装工事費用
内装工事費用は、開業資金の中で最も大きな割合を占めます。小規模サロン(10坪、2セット、1シャンプー)の場合、300万円から500万円程度が相場です。中規模サロン(20〜30坪、3〜5セット)の場合は、800万円から1,200万円程度が必要になります。
内装工事費用は、デザインや使用する材料、設備のグレードによって大きく変動します。
おしゃれなデザインにこだわったり、高級な材料を使用したりすると、費用は高くなります。一方、シンプルなデザインにしたり、コストパフォーマンスの良い材料を選んだりすることで、費用を抑えることも可能です。
居抜き物件を利用する場合は、前のテナントの設備を引き継げるため、内装工事費用を大幅に削減できます。ただし、自分のコンセプトに合わせた改装が必要になることもありますので、トータルコストを考慮して判断しましょう。
設備・機材費
美容室に必要な設備・機材には、セット面(鏡台と椅子)、シャンプー台、ドライヤー、カット用のハサミ、カラーやパーマの機材などがあります。
これらの費用は、小規模サロンで200万円程度、中規模サロンで300万円から500万円程度が相場です。
シャンプー台は1台あたり50万円から100万円程度と高額で、設置のための床の底上げ工事にも費用がかかります。セット面は1面あたり10万円から30万円程度です。
設備・機材は、新品を購入するだけでなく、中古品を利用したり、リースを活用したりすることで、初期費用を抑えることもできます。ただし、中古品は故障のリスクがあることや、リースには金利が発生することも考慮に入れて判断しましょう。
材料費と備品費
開業時には、カラー剤、パーマ剤、シャンプー、トリートメントなどの美容消耗品に加え、タオル、清掃用具、レジスターなどの備品も必要です。これらの費用は、50万円から100万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
美容ディーラーと契約することで、消耗品を定期的に仕入れることができます。
開業時には、最低でも1〜2か月分の在庫を確保しておくことをおすすめします。
広告宣伝費
開業時の集客には、広告宣伝費も必要です。
ホームページの制作、チラシの作成と配布、SNSの運用、集客サイトへの掲載などが考えられます。これらの費用は、50万円から100万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
ホームページは、お客様が美容室を探す際の重要な情報源です。制作費用は10万円から50万円程度と幅がありますが、プロに依頼することで、美容室の魅力を効果的に伝えられるサイトを作ることができます。
集客サイトへの掲載も、新規顧客の獲得に有効です。ホットペッパービューティーなどの大手集客サイトは、初期費用と月額費用がかかりますが、多くの人に認知してもらえるメリットがあります。
運転資金
開業後、売上が安定するまでには時間がかかります。その間の家賃、光熱費、スタッフの給与、自分の生活費などを賄うための運転資金も必要です。一般的には、3か月から6か月分の運転資金を用意しておくことが推奨されます。
月々の固定費が50万円の場合、6か月分で300万円の運転資金が必要になります。開業直後は想定通りに売上が立たないこともありますので、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
美容室の開業資金の調達方法

美容室の開業には多額の資金が必要ですが、全額を自己資金で用意できる方は少数です。ここでは、開業資金を調達するための主な方法について詳しく解説します。それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、自分の状況に合った方法を選びましょう。
自己資金をしっかり準備する
開業資金の調達において、自己資金は非常に重要です。融資を受ける際にも、自己資金の額が審査のポイントになります。一般的には、開業費用の25〜30%程度の自己資金を用意することが目安とされています。
自己資金が不足している場合でも、家族からの協力金を合算できることがあります。配偶者や両親から資金援助を受ける場合は、贈与税の問題も考慮に入れて、適切な手続きを行いましょう。
自己資金を増やすためには、開業前の数年間で計画的に貯蓄することが大切です。給与の一部を毎月貯金したり、副業で収入を増やしたりすることで、自己資金を積み上げていきましょう。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、国の政策金融機関で、経営実績がない創業時の融資を積極的に行っています。
美容室の開業にあたっても、多くの方が日本政策金融公庫を利用しています。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、開業時に無担保・無保証で最大3,000万円まで融資を受けられる制度です。ただし、自己資金が創業資金の10分の1以上あることが条件となります。
融資を受けるためには、事業計画書の作成が必須です。
事業計画書では、開業動機、事業の見通し、資金計画などを具体的に示す必要があります。しっかりとした計画を立てることで、融資の可決率を高めることができます。
実際に、専門家のサポートを受けながら事業計画書を作成した場合、融資の可決率は非常に高くなっています。2025年6月時点で、ある開業支援会社では創業計画書作成人数266名中、264名が満額、2名が減額で融資が可決されており、ほぼ100%の成功率を誇っています。
銀行などの民間金融機関からの融資
銀行や信用金庫などの民間金融機関からも融資を受けることができます。
ただし、創業時は実績がないため、日本政策金融公庫に比べて審査が厳しくなる傾向があります。
民間金融機関から融資を受ける際には、担保や保証人が求められることが多いです。また、事業計画書に加えて、詳細な返済計画も必要になります。
地域の信用金庫や信用組合は、地元の中小企業を支援する方針を持っていることが多く、銀行よりも融資を受けやすい場合があります。開業を予定しているエリアの金融機関に相談してみることをおすすめします。
補助金・助成金の活用
美容室の開業時や開業後に活用できる補助金・助成金制度もあります。これらは返済不要の資金ですので、条件に合えば積極的に活用したいところです。
2025年度の主な補助金・助成金には以下のようなものがあります。
「IT導入補助金」は、予約システムや顧客管理システムなどのITツールの導入費用を補助する制度です。美容室の業務効率化に役立つシステムの導入に活用できます。
「小規模事業者持続化補助金」は、販路開拓や生産性向上に取り組む小規模事業者を支援する制度です。ホームページの制作やチラシの作成など、広告宣伝費に活用できます。
「事業承継・M&A補助金」は、他の事業者から事業を引き継ぐ場合に活用できる制度です。既存の美容室を引き継いで開業する場合、初期費用を抑えられるだけでなく、固定客も引き継げるメリットがあります。
東京都内で開業する場合は、「開業助成金」という独自の制度があります。
商店街で美容室や理容室を開業する場合、店舗の家賃や改装工事費、美容機器や備品購入費などが最大844万円助成されます。2025年度は第1回が8月1日以降開業の方を対象に、4月7日から4月28日まで申請受付が行われます。
補助金・助成金は、それぞれ申請期間や条件が定められていますので、事前に公式サイトで確認し、必要書類を準備しておきましょう。
美容室開業で失敗しないための注意点
美容室を開業しても、残念ながら数年で廃業してしまうケースも少なくありません。開業後に後悔しないためには、事前の準備と計画が非常に重要です。ここでは、美容室開業で失敗しないための注意点をいくつかご紹介します。
コンセプトに合った物件を選ぶ
物件選びは、美容室の成功を左右する重要な要素です。家賃が安いからといって、ターゲット顧客がいないエリアに出店しても、集客に苦労することになります。
コンセプトとターゲットを明確にした上で、それに合った立地を選ぶことが大切です。例えば、若い女性をターゲットにするなら繁華街や駅近、ファミリー層をターゲットにするなら住宅街、といった具合です。
また、競合店の状況も確認しましょう。同じエリアに似たコンセプトの美容室が既にたくさんある場合、差別化が難しくなります。競合が少ないエリアや、自分の強みを活かせるニッチな市場を見つけることも戦略の一つです。
資金繰りをしっかりと計画する
開業後に資金不足に陥ることは、廃業の大きな原因の一つです。売上が想定通りに立たない期間を乗り切るためには、十分な運転資金を確保しておくことが必要です。
開業直後は、お客様の認知度が低く、予約が埋まらないことも多いです。最初の数か月は赤字を覚悟し、その間の固定費や生活費を賄える資金を用意しておきましょう。
また、毎月の売上と経費を記録し、経営状況を常に把握することも大切です。
会計ソフトを導入することで、経営管理が簡単にできます。売上が多いからといって安心していても、経費も多くかかっていれば利益は出ません。数字をしっかりと見て、必要に応じて改善策を講じましょう。
スタッフの採用は慎重に行う
スタッフの採用は、美容室経営において重要な決断です。技術力だけでなく、人柄やコミュニケーション能力、お店のコンセプトへの共感度なども考慮して選びましょう。
知り合いや元同僚を誘って開業するケースもありますが、仲が良いだけでは経営はうまくいきません。お店の方針、役割分担、報酬体系などをしっかりと話し合い、お互いの期待値を合わせておくことが大切です。
また、スタッフを雇用する際には、労働条件を明確にし、労働契約書を取り交わしましょう。後々のトラブルを防ぐためにも、最初からきちんとした雇用関係を築くことが重要です。
決済方法とITツールの選定も重要
現代の美容室経営では、キャッシュレス決済の導入は必須です。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など、多様な決済方法に対応することで、お客様の利便性が向上します。
決済端末の選定には、手数料や導入費用だけでなく、操作性や対応している決済方法も考慮しましょう。また、予約システムやPOSレジとの連携ができるものを選ぶと、業務効率が大幅に向上します。
予約システムの導入も、美容室経営を効率化する重要なツールです。電話予約だけでなく、ネット予約にも対応することで、24時間予約を受け付けられるようになります。予約管理が楽になるだけでなく、お客様にとっても便利です。
集客に失敗しないための準備
美容室を開業しても、お客様が来なければ意味がありません。開業前から集客の準備を始めることが、成功への近道です。ここでは、集客に失敗しないための準備について詳しく解説します。
開業前から集客活動を始める
集客活動は、開業してから始めるのでは遅すぎます。開業の1〜2か月前から、積極的に集客活動を始めましょう。開業前に認知度を高めておくことで、オープン初日から多くのお客様に来店していただける可能性が高まります。
まず、SNSアカウントを開設し、開業準備の様子を発信していきましょう。InstagramやX(旧Twitter)、LINEなどを活用して、工事の進捗状況、お店のコンセプト、スタッフの紹介などを投稿します。フォロワーを増やすことで、開業時の集客につながります。
ホームページも開業前に公開しておきましょう。お店の場所、営業時間、メニュー、料金、コンセプトなどの基本情報を掲載します。Googleビジネスプロフィールにも登録し、地図検索で表示されるようにしておきます。
SNSを活用した情報発信
現代の美容室集客において、SNSの活用は欠かせません。特にInstagramは、美容室との相性が非常に良く、多くの美容室が集客に活用しています。
Instagramでは、施術のビフォーアフター写真、ヘアスタイルの提案、セルフケアのアドバイス、お店の雰囲気などを投稿しましょう。視覚的に魅力が伝わるコンテンツが、フォロワーの興味を引きます。
投稿頻度は、週3〜5回が最も効率的とされています。2025年の最新調査によると、週3〜5回投稿している美容室は、フォロワー増加率が高く、エンゲージメントも良好です。毎日投稿する必要はありませんが、定期的に投稿することで、フォロワーとの関係性を維持できます。
ハッシュタグの使い方にも注意が必要です。以前は多くのハッシュタグをつけることが推奨されていましたが、2025年の最新情報では、Instagramの責任者が「ハッシュタグを使っても、リーチが劇的に伸びるわけではない」と明言しています。現在は、文脈に沿った3〜5個程度のハッシュタグに絞り、コンテンツそのものの質に注力することが推奨されています。
Googleビジネスプロフィールの活用
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)は、無料で利用できる強力な集客ツールです。
お店の情報を登録することで、Google検索やGoogleマップでお店が表示されるようになります。
登録する情報には、店名、住所、電話番号、営業時間、ウェブサイトURL、写真などがあります。特に写真は重要で、店内の雰囲気やスタッフの様子、施術風景などを掲載することで、お客様の不安を軽減できます。
口コミへの返信も大切です。良い口コミには感謝の気持ちを伝え、悪い口コミには誠実に対応しましょう。口コミへの対応が丁寧だと、他のお客様からの信頼も高まります。
集客サイトへの掲載
ホットペッパービューティーなどの集客サイトへの掲載も、新規顧客の獲得に有効です。
多くの人が美容室を探す際に集客サイトを利用しているため、掲載することで認知度が大幅に向上します。
集客サイトには、初期費用と月額費用がかかりますが、新規顧客の獲得効率を考えると、投資する価値は十分にあります。特に開業直後は認知度が低いため、集客サイトを活用することで、早期に顧客基盤を築くことができます。
掲載する際には、魅力的な写真と詳細な情報を掲載しましょう。お店の特徴、得意なスタイル、使用している薬剤、料金、アクセス方法などを丁寧に説明することで、お客様に選ばれやすくなります。
リピーターを増やす仕組み作り
新規顧客を獲得することも大切ですが、リピーターを増やすことはさらに重要です。美容室経営において、リピーターの存在は安定した売上の基盤となります。
リピーターを増やすためには、施術の技術はもちろん、接客の質も重要です。お客様一人ひとりに寄り添い、丁寧なカウンセリングを行い、満足度の高いサービスを提供しましょう。
また、次回予約を促す仕組みも効果的です。施術後に「次回は〇週間後がおすすめです」と具体的に提案したり、次回使えるクーポンを渡したりすることで、再来店を促すことができます。
LINE公式アカウントを開設し、お客様と継続的にコミュニケーションを取ることもおすすめです。新しいメニューの案内や、季節に合わせたヘアケアのアドバイスなどを配信することで、お客様との関係性を深められます。
開業後の経営を成功させるポイント
美容室を開業した後も、継続的に経営を改善していく姿勢が大切です。市場の変化や顧客のニーズに合わせて、柔軟に対応していきましょう。ここでは、開業後の経営を成功させるためのポイントをご紹介します。
顧客データを活用する
お客様の情報をしっかりと記録し、活用することが重要です。来店日、施術内容、使用した薬剤、次回の提案などを記録しておくことで、次回来店時により良いサービスを提供できます。
顧客管理システムを導入すると、お客様の情報を一元管理でき、スタッフ間での情報共有もスムーズになります。誕生日や来店周期に合わせてメッセージを送ることで、リピート率を高めることもできます。
メニューと価格設定の見直し
定期的にメニューと価格設定を見直すことも大切です。新しいトレンドや技術を取り入れたり、お客様からの要望に応えたりすることで、競合店との差別化を図れます。
価格設定も、原価や人件費、市場の相場を考慮して適正な金額にしましょう。安すぎると利益が出ませんし、高すぎると顧客が離れてしまいます。価値に見合った適正価格を設定することが重要です。
スタッフの教育とモチベーション管理

スタッフを雇用している場合、スタッフの教育とモチベーション管理も経営者の重要な仕事です。定期的に技術研修を行ったり、接客スキルを向上させたりすることで、サロン全体のサービスレベルが向上します。
また、スタッフが働きやすい環境を整えることも大切です。適切な報酬、休暇、キャリアパスを提供することで、スタッフの定着率が高まります。優秀なスタッフが長く働いてくれることは、美容室の大きな財産となります。
税理士のサポートを受ける
美容室の経営では、確定申告や税務処理など、専門的な知識が必要な場面が多くあります。税理士のサポートを受けることで、適切な税務処理を行い、節税対策も講じることができます。
税理士は税務だけでなく、経営相談にも乗ってくれることが多いです。経営に関する悩みや資金繰りの相談なども、気軽にできる専門家がいると心強いでしょう。
まとめ
美容室の開業は、多くの準備と計画が必要な大きなプロジェクトです。しかし、しっかりとした準備を行い、計画的に進めていけば、夢の実現は決して遠くありません。
この記事では、美容室開業に必要な資格から、開業までの流れ、資金調達の方法、集客の準備まで、幅広くご紹介しました。特に重要なポイントをまとめると、以下のようになります。
まず、美容師免許と管理美容師免許(スタッフを雇う場合)の取得が必須です。開業までの流れは、コンセプト設定、物件選び、資金調達、内装工事、設備導入、スタッフ採用、各種手続きと進みます。開業資金は、一人で営業する場合700万円から1,000万円、複数人で営業する場合1,500万円から2,000万円程度が相場です。
資金調達には、自己資金、日本政策金融公庫からの融資、銀行融資、補助金・助成金などの方法があります。保健所と消防署での手続きは、営業開始前に必ず完了させる必要があります。税務署への開業届や、スタッフを雇う場合の労働保険の手続きも忘れずに行いましょう。
集客に失敗しないためには、開業前からSNSやホームページで情報発信を始め、Googleビジネスプロフィールや集客サイトも活用します。リピーターを増やす仕組み作りも、長期的な成功には欠かせません。
美容室の開業は、準備が大変な分、自分の理想を形にできる素晴らしい機会でもあります。この記事を参考に、計画的に準備を進めて、理想の美容室を実現してください。お客様に喜ばれる美容室を作ることができれば、経営者としての大きな喜びを感じられるはずです。
最後に、一人で全てを抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用することも成功の秘訣です。税理士、社会保険労務士、内装業者、美容ディーラーなど、それぞれの分野のプロフェッショナルの力を借りながら、着実に開業への道を進んでいきましょう。
あなたの美容室開業が成功することを心から応援しています。

