フリーランス美容師の働き方とは?メリットやデメリットを解説

「美容師として働いているけれど、もっと自由な働き方がしたい」「収入を上げたいけれど、今のサロンでは限界を感じる」「将来的に独立を考えているけれど、いきなり開業するのは不安」——。このようなお悩みを抱えている美容師の方は少なくありません。
そんな方々の選択肢として注目されているのが「フリーランス美容師」という働き方です。近年、美容業界ではフリーランスとして活躍する美容師が増加しており、2017年時点で8万人を超えたというデータもあります。働き方改革やライフスタイルの多様化が進む中、この流れは今後もさらに加速していくと予想されます。
この記事では、フリーランス美容師とは何か、どのような働き方があるのか、メリット・デメリット、収入の実態、そして実際にフリーランスになるために必要な手続きまで、詳しく解説していきます。フリーランス美容師に興味がある方、将来の働き方を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
【基本解説】フリーランス美容師とは?雇用美容師や独立開業との違い
フリーランス美容師とは、美容室などに雇用されず、個人事業主として働く美容師のことを指します。通常の美容師が「会社員」として給与をもらうのに対し、フリーランス美容師は自分で集客を行い、売上の一部を報酬として受け取る形になります。
店舗を持つ「独立開業」とフリーランスの根本的な違い
フリーランス美容師と開業(美容室経営)は、どちらも「独立」という点では共通していますが、大きな違いがあります。
開業の場合は自分で店舗を構え、内装工事や設備の購入、従業員の雇用など、すべてを自分で準備する必要があります。初期費用として数百万円から1,000万円以上かかることも珍しくなく、失敗した場合のリスクも大きくなります。
一方、フリーランス美容師は既存の美容室やシェアサロンの設備を借りて働くため、初期費用を大幅に抑えられるのが特徴です。自分の店舗を持たない分、家賃や設備投資のリスクを負わずに独立できるため、「開業のテスト」として始める方も多くいらっしゃいます。
なぜ美容師の離職率は高い?業界の課題とフリーランス増加の背景

ホットペッパービューティーアカデミーが実施した「美容サロン就業実態調査(2024年)」によると、美容師の初職就業期間は「3年未満」が36.7%にのぼります。また、厚生労働省のデータでは、1年目の離職率が30%、3年目までの離職率は56%という結果も出ています。
離職理由の上位には「給与に対する不満」が挙げられており、4人に1人以上がこの理由で退職しています。その他にも、長時間労働や人間関係のトラブル、体調不良(手荒れなど)が原因で、美容師という職業自体を離れてしまう方も少なくありません。
シェアサロン増加で選択肢が広がるフリーランス美容師の現状
このような背景から、働きやすさを求めてフリーランス美容師になる方が増えています。2024年以降は歩合70〜85%という高還元率のシェアサロンも増加しており、フリーランス美容師にとって働きやすい環境が整いつつあります。
「正社員では収入に限界がある」「もっと自分のペースで働きたい」「子育てや介護と両立したい」
フリーランス美容師は、こうしたニーズに応える新しい働き方として注目を集めているのです。
フリーランス美容師の働き方3パターン
フリーランス美容師の働き方は、大きく分けて「業務委託」「面貸し」「シェアサロン」の3つがあります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った働き方を選ぶことが大切です。
【業務委託型】サロン集客に頼れる初心者向けスタイル
業務委託とは、美容室と業務委託契約を結び、施術を担当する働き方です。お客様はサロン側が集客してくれるため、自分で集客する手間が省けます。
報酬は、施術した売上の40〜50%程度が一般的です。たとえば、月に100万円の売上を上げた場合、40〜50万円が報酬として支払われる計算になります。材料費や光熱費はサロン側が負担することが多いため、経費の心配が少ないのもメリットです。
業務委託のフリーランス美容師は、サロンのスタッフとして働きながらも、正社員とは異なり出勤日数や勤務時間をある程度自由に決められる場合が多いです。「いきなり独立は不安」「集客に自信がない」という方にとって、最初の一歩として取り組みやすい働き方といえるでしょう。
【面貸し型】高還元率で稼ぎたい経験者向けスタイル
面貸しとは、美容室のセット面(施術スペース)を時間や日単位で借りて、自分のお客様に施術を行う働き方です。「ミラーレンタル」とも呼ばれます。
面貸しの場合、集客は完全に自分で行う必要があります。その分、売上から支払うロイヤリティ(使用料)は業務委託よりも低く、売上の20〜30%程度が一般的です。残りの70〜80%が自分の収入になるため、集客力のある美容師にとっては収入アップが期待できます。
ただし、集客がうまくいかなければ収入は減ってしまいます。すでに固定客を持っている美容師や、SNSなどで集客力がある方に向いている働き方です。
【シェアサロン型】設備充実×高歩合の注目スタイル
シェアサロンとは、フリーランス美容師専用に設計されたサロンスペースのことです。複数のフリーランス美容師がそれぞれ独立して営業を行い、設備やスペースを共有します。
シェアサロンの大きな魅力は、歩合率の高さです。売上の70〜85%が美容師の取り分になることも珍しくありません。たとえば、売上80万円で歩合80%なら、64万円が収入になります。年収換算で768万円と、正社員時代よりも大幅な収入アップが見込めます。
また、シェアサロンは立地の良い場所にあることが多く、設備も整っています。個人でサロンを開業するよりも初期費用を抑えながら、良い環境で仕事ができるのがメリットです。
あなたに最適なのは?3つの働き方を選ぶ判断基準
どの働き方が合っているかは、現在の顧客数や集客力、リスク許容度によって異なります。
集客に自信がなく、まずはフリーランスを体験してみたい方は「業務委託」から始めるのがおすすめです。すでに固定客がいて、より高い収入を目指したい方は「面貸し」や「シェアサロン」が向いているでしょう。
いずれの働き方を選ぶにしても、いきなり正社員を辞めるのではなく、副業として少しずつ始めてみるのも一つの方法です。
フリーランス美容師になると何が変わる?7つのメリットを解説
フリーランス美容師として働くことには、多くのメリットがあります。ここでは、代表的なメリットを7つ紹介します。
【給料アップ】努力次第で正社員時代の2倍以上の収入も可能
フリーランス美容師の最大のメリットは、努力が収入に直結することです。正社員の場合、どれだけ売上を上げても給与の上昇には限界がありますが、フリーランスなら頑張った分だけ収入が増えます。
実際、フリーランス美容師の平均月収は40万円前後といわれています。正社員美容師の平均年収が約330万円(月収約27万円)であることを考えると、フリーランスになることで大幅な収入アップが期待できます。中には月収100万円以上を稼ぐ方もいらっしゃいます。
【時間の自由】出勤日・勤務時間を自分で決められる
フリーランス美容師は、労働日数や勤務時間を自分で決められます。「週3日だけ働きたい」「午前中だけ働きたい」「夏休みを長めに取りたい」——。こうした希望も、フリーランスなら実現可能です。
子育てや介護との両立、副業との掛け持ち、趣味の時間の確保など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができるのは大きな魅力です。
【顧客との関係性】カウンセリングから仕上げまで一貫対応できる

サロン勤務では、アシスタントとの分業が一般的ですが、フリーランス美容師は1人のお客様を最初から最後まで担当できます。カウンセリングからシャンプー、カット、スタイリングまで一貫して行うことで、お客様との信頼関係をより深く築けます。
「自分」という「商品」を選んでいただいたお客様に対して、最高のサービスを提供できる環境は、やりがいにもつながります。
【低リスク】開業資金をかけずに独立への第一歩を踏み出せる
自分でサロンを開業する場合、物件取得費、内装工事費、設備購入費など、数百万円から1,000万円以上の初期費用が必要です。しかし、フリーランス美容師なら既存の設備を利用できるため、初期費用をほとんどかけずに独立できます。
シェアサロンによっては「初期費用ゼロ」で始められるところもあり、金銭的なリスクを抑えながら独立したい方にとって大きなメリットです。
【商材の自由】本当に良いと思える製品でお客様に施術できる
サロン勤務では、使用する商材はサロンが決めたものに限られますが、フリーランスなら自分が本当に良いと思う商材を選んで使うことができます。
お客様の髪質や要望に合わせて、最適な商材を提供できる環境は、施術のクオリティ向上にもつながります。
【精神的な解放】売上ノルマや店販プレッシャーから解放される
サロン勤務では、売上ノルマや店販ノルマが設定されていることも少なくありません。ノルマ達成のプレッシャーから解放されることで、純粋に施術に集中できるようになります。
また、サロン内の人間関係に悩まされることも減り、精神的なストレスが軽減されるという声も多く聞かれます。
【専門特化】得意な技術・スタイルに集中してスキルを磨ける
フリーランス美容師は、自分の得意な施術やスタイルに特化した営業ができます。「カラーが得意」「ショートヘア専門」「メンズ特化」など、自分の強みを活かしたブランディングが可能です。
得意分野に集中することで、技術力の向上とともに、その分野での評価も高まります。
知らないと後悔する!フリーランス美容師のデメリットと注意点
フリーランス美容師にはメリットが多い一方で、注意すべきデメリットもあります。事前に把握しておくことで、後悔のない選択ができるでしょう。
【収入面】毎月の給料が保証されない不安定さ
フリーランス美容師の最大のデメリットは、収入が安定しないことです。お客様の来店数によって毎月の収入が変動するため、繁忙期と閑散期では収入に大きな差が出ることもあります。
正社員であれば、売上が少ない月でも一定の給与が保証されますが、フリーランスではそうはいきません。「今月は50万円稼げても、来月は20万円以下」ということも十分にあり得ます。
【業務量】経理・予約管理・SNS運用など事務作業が増える
フリーランス美容師は、施術以外にもさまざまな業務を自分でこなす必要があります。予約管理、集客活動、SNS運用、顧客管理、材料の発注、経理作業、確定申告など、やるべきことは多岐にわたります。
これらの雑務に時間を取られ、本来の施術業務に支障が出てしまうケースもあります。事務作業が苦手な方にとっては大きな負担になる可能性があります。
【社会的信用】住宅ローン・カード審査で不利になることも
フリーランス(個人事業主)は、会社員と比べて社会的信用が低く評価されることがあります。そのため、住宅ローンや車のローン、クレジットカードの審査に通りにくくなる可能性があります。
フリーランスになる前に、必要なローンやクレジットカードの申込みを済ませておくことをおすすめします。
【成長環境】技術研修や先輩指導を受ける機会が減少する
サロン勤務では、先輩美容師から技術を教えてもらったり、サロン主催の研修を受けたりする機会がありますが、フリーランスではこうした機会が減少します。
技術の向上は自己投資として自ら学ぶ必要があり、セミナー参加費や講習費は自己負担となります。常に向上心を持って学び続ける姿勢が求められます。
【保険・年金】社会保険がなくなり全額自己負担になる
フリーランスになると、社会保険や厚生年金から脱退し、国民健康保険と国民年金に切り替える必要があります。産休・育休制度や失業保険もないため、万が一の際のセーフティネットは自分で用意しなければなりません。
また、体調を崩して働けなくなった場合、収入がゼロになるリスクもあります。フリーランス向けの所得補償保険や賠償責任保険への加入を検討することをおすすめします。
【失敗例から学ぶ】フリーランス美容師の末路を避けるために
「フリーランス美容師 末路」というキーワードで検索する方もいらっしゃいますが、フリーランスだから失敗するわけではありません。失敗する原因の多くは、準備不足やリスク管理の甘さにあります。
十分な顧客基盤がないまま独立してしまう、集客方法を確立しないまま始めてしまう、収入が不安定な時期の生活費を用意していない——。こうした準備不足が、フリーランス美容師の「末路」につながってしまうのです。
逆に言えば、しっかりと準備をして計画的に独立すれば、成功の可能性は十分にあります。
フリーランス美容師の月収・年収・給料はいくら?収入の実態を公開
フリーランス美容師を検討する上で、最も気になるのが収入面ではないでしょうか。ここでは、働き方別の収入目安と、収入に影響する要因について詳しく解説します。
【平均データ】フリーランス美容師の月収相場と年収目安
フリーランス美容師の月収は、一般的に10万円〜50万円の幅があります。平均的には月収40万円前後、年収にして約480万円が目安とされています。
ただし、これはあくまで平均値であり、実際には働き方や集客力によって大きく異なります。人気のフリーランス美容師の中には、月収100万円以上を稼ぐ方もいらっしゃいます。
参考までに、正社員美容師の平均年収は約330万円(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」)です。フリーランスになることで、平均よりも高い収入を得られる可能性があります。
【業務委託の場合】歩合40〜50%で計算する収入シミュレーション
業務委託の場合、売上の40〜50%が報酬となるのが一般的です。
たとえば、月の売上が80万円、歩合率が50%の場合、月収は40万円となります。年収に換算すると480万円です。売上が100万円になれば月収50万円、年収600万円も可能です。
さらに、インセンティブや指名料が上乗せされるサロンもあり、頑張り次第で収入を伸ばすことができます。
【面貸し・シェアサロンの場合】歩合70〜85%で計算する収入シミュレーション
面貸しやシェアサロンの場合、売上の70〜85%が自分の取り分になることが多いです。
たとえば、月の売上が80万円、歩合率が80%の場合、月収は64万円となります。年収に換算すると768万円です。売上が100万円になれば月収80万円、年収960万円と、正社員時代とは比べものにならない収入が期待できます。
ただし、この金額から材料費(売上の約10%)や税金を差し引く必要があります。実際の手取りは、シミュレーションよりも少なくなる点に注意しましょう。
【重要】フリーランス美容師の収入を大きく左右する3つの要素
フリーランス美容師の収入は、主に以下の要因によって左右されます。
1つ目は「顧客数」です。固定客が多いほど、安定した売上を確保できます。来店見込み客は、正社員時代の顧客の6〜7割程度と考えておくのが現実的です。
2つ目は「客単価」です。カットだけでなく、カラーやトリートメント、ヘッドスパなどの高単価メニューを提案できれば、同じ客数でも売上を伸ばせます。
3つ目は「集客力」です。SNSでの発信やクーポンサイトの活用など、新規顧客を獲得する力があれば、収入の上限はありません。
成功するのはこんな人!フリーランス美容師に向いている5つの特徴
フリーランス美容師として成功するためには、向き不向きがあります。ここでは、フリーランス美容師に向いている人の特徴を5つ紹介します。
【特徴①】指名客・固定ファンが一定数ついている
フリーランスになって最も重要なのは、自分を指名してくれる固定客の存在です。正社員からフリーランスに転身した後も、ついてきてくれるお客様がどれだけいるかが、成功の鍵を握ります。
目安として、月に45万円程度の売上(約30万円の月収)があれば、フリーランスとしてやっていける最低ラインといわれています。現在の指名売上を確認し、フリーランスになる準備ができているか判断しましょう。
【特徴②】売上・予約・経理など数字の管理が得意

フリーランス美容師は、時間やお金の管理をすべて自分で行う必要があります。予約のスケジュール管理、経費の計算、確定申告など、細かい事務作業も苦にならない人が向いています。
また、収入が不安定になりがちなため、繁忙期に稼いだお金を閑散期に備えて貯蓄しておくなど、計画的な金銭管理能力も求められます。
【特徴③】情報収集力があり自己投資を惜しまない
フリーランスには、上司や先輩が教えてくれる環境はありません。技術の向上も、集客方法の改善も、すべて自分で学び、試行錯誤していく必要があります。
「教えてもらうのを待つ」のではなく、「自分から学びに行く」積極性がある人は、フリーランス美容師として成長し続けることができるでしょう。
【特徴④】子育て・副業など柔軟な時間配分を望んでいる
子育てや介護、副業との両立など、フルタイムで働くことが難しい方にとって、フリーランス美容師は理想的な働き方です。
週3日だけ働く、午前中だけ働く、繁忙期だけ働く——。自分のライフスタイルに合わせて働き方をデザインできるのは、フリーランスならではの魅力です。
【特徴⑤】インスタ発信や紹介依頼など営業活動に抵抗がない
フリーランス美容師として継続的に稼いでいくためには、新規顧客の獲得が欠かせません。InstagramやTikTokでの発信、クーポンサイトへの登録、知人への紹介依頼など、集客活動を継続できる人が向いています。
「施術だけに集中したい」「営業活動は苦手」という方は、業務委託から始めて、徐々に集客スキルを磨いていくのも一つの方法です。
フリーランス美容師の集客方法5選|SNS・紹介・名刺の活用術
フリーランス美容師にとって、集客は収入に直結する最重要課題です。ここでは、効果的な集客方法を5つ紹介します。
【集客法①】インスタ・TikTokで作品発信してファンを増やす
現代の美容師にとって、SNSは最も効果的な集客ツールの一つです。特にInstagramは、ビフォーアフター写真やスタイル写真を投稿することで、視覚的にアピールできます。
効果的なSNS運用のポイントは、一貫性のある投稿とハッシュタグの活用です。自分の得意なスタイルや世界観を統一して発信し続けることで、ターゲットとなるお客様に見つけてもらいやすくなります。
また、TikTokを活用して集客に成功している美容師も増えています。動画コンテンツは拡散力が高く、新規顧客獲得に効果的です。
【集客法②】既存顧客・知人からの口コミ紹介を依頼する
口コミや紹介は、最も信頼性の高い集客方法です。既存のお客様に「ぜひお友達にも紹介してください」とお願いしたり、紹介特典を設けたりすることで、紹介客を増やすことができます。
また、美容師仲間や知人に自分がフリーランスになったことを伝え、紹介をお願いするのも効果的です。人脈の広さが集客に直結することもあります。
【集客法③】ホットペッパー・minimoなどの予約サイトを活用
ホットペッパービューティーやminimo(ミニモ)などのクーポンサイトに登録することで、新規顧客を獲得できます。特にminimoは、フリーランス美容師でも個人で登録できるため、活用している方が多いです。
クーポンサイトでは、プロフィールやスタイル写真、口コミが重要なポイントになります。魅力的なプロフィールを作成し、施術後はお客様に口コミ投稿をお願いしましょう。
【集客法④】フリーランス美容師専用の名刺を作成・配布する
デジタル全盛の時代でも、名刺は重要な集客ツールです。施術後にお客様に名刺を渡すことで、次回の予約や紹介につなげることができます。
フリーランス美容師の名刺には、名前、連絡先、SNSアカウント、予約方法などを記載しましょう。QRコードを入れて、LINE公式アカウントや予約ページに誘導するのも効果的です。
【集客法⑤】地域密着型のチラシ・ポスティングを実施
地域密着型の集客を目指すなら、チラシや地域広告も有効です。特に、シェアサロンがある地域の周辺住民をターゲットにしたポスティングは、一定の効果が期待できます。
ただし、広告費用は自己負担となるため、費用対効果を考慮しながら実施することが大切です。まずは低コストのSNS集客から始め、余裕ができたら広告を検討するのがおすすめです。
開業届・確定申告・保険|フリーランス美容師に必要な手続き一覧
フリーランス美容師になるためには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、必ず押さえておきたい手続きについて解説します。
【開業届】税務署への届出方法と書き方のポイント
フリーランス美容師は個人事業主となるため、税務署に「開業届」を提出する必要があります。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、開業日から1ヶ月以内に提出します。
開業届は、国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署で直接もらうことができます。記入する内容は、住所、氏名、事業の種類(美容業など)、開業日などで、難しいものではありません。
なお、開業届を提出しなくても罰則はありませんが、後述する青色申告ができなかったり、屋号での銀行口座開設ができないなどのデメリットがあります。「開業届出さない」という選択は避け、しっかりと提出しておきましょう。
【確定申告】青色申告で最大65万円の節税メリットを得る方法
フリーランス美容師は、毎年2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。確定申告とは、1年間の収入と経費を計算し、税金を申告・納付する手続きです。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があり、青色申告の方が節税メリットが大きいです。青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除が受けられます。
青色申告を行うためには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。開業日から2ヶ月以内、または1月1日〜1月15日に開業した場合は3月15日までが提出期限です。
【国民健康保険】社会保険から切り替える際の手続き方法
会社員からフリーランスになると、社会保険を脱退して国民健康保険に加入する必要があります。退職後14日以内に、住んでいる市区町村の役所で手続きを行いましょう。
手続きに必要なものは、健康保険の「資格喪失証明書」(前の会社からもらう)、マイナンバーカードまたは通知カード、本人確認書類です。
同時に、国民年金への加入手続きも行います。日本に住む20歳以上60歳未満の方は、国民年金への加入が義務付けられています。
【賠償責任保険】施術トラブルに備える任意保険の選び方
フリーランス美容師は、施術中の事故やトラブルに備えて、賠償責任保険への加入を検討することをおすすめします。お客様の髪や肌にダメージを与えてしまった場合、損害賠償を請求されるリスクがあるためです。
フリーランス向けの賠償責任保険は、月額数千円程度から加入できるものもあります。万が一の際の安心材料として、ぜひ検討してみてください。
【税金と経費】フリーランス美容師が経費計上できる項目とは
フリーランス美容師が支払う主な税金は、所得税、住民税、個人事業税、消費税(売上1,000万円超の場合)です。これらの税金を少しでも抑えるためには、経費を正しく計上することが重要です。
フリーランス美容師が経費として計上できるものには、材料費(シャンプー、カラー剤など)、サロン使用料、交通費、通信費、研修費、美容関連書籍代、衣装代などがあります。
領収書やレシートは5〜7年間の保存が義務付けられているため、紛失しないように整理しておきましょう。会計ソフトを使えば、経費管理や確定申告の作業を効率化できます。
今後も伸びる?フリーランス美容師の将来性と業界トレンド
フリーランス美容師という働き方は、今後どのような展望があるのでしょうか。ここでは、フリーランス美容師の将来性について考えてみましょう。
働き方改革・副業解禁でフリーランスを選ぶ美容師が増加中
働き方改革やライフスタイルの多様化を背景に、フリーランス美容師を取り巻く環境は年々改善されています。高還元率のシェアサロンが増加し、フリーランス向けの保険や福利厚生サービスも充実してきました。
また、政府もフリーランスの保護に力を入れており、2023年にはフリーランス保護新法が成立しました。フリーランスが安心して働ける環境づくりが進んでいます。
SNS・動画プラットフォームの普及で個人発信力が武器になる時代
InstagramやTikTok、YouTubeなど、自分の作品や技術を発信できるプラットフォームは年々増えています。SNSを活用することで、フリーランス美容師でも全国、さらには世界に向けて自分の存在をアピールできるようになりました。
フォロワー数やインフルエンサーとしての影響力を持つことで、施術以外の収入源(広告収入、セミナー講師、商品プロデュースなど)を得ている美容師も増えています。
長く活躍するために必要なスキルと心構えとは
フリーランス美容師として長く活躍し続けるためには、技術力の向上はもちろん、集客力、マーケティング力、自己管理能力を磨き続けることが大切です。
常に新しいトレンドをキャッチし、お客様のニーズに応えられる技術を身につけること。SNSなどを活用して、自分の存在を発信し続けること。そして、健康管理やメンタルケアを怠らないこと。
これらを継続できる方は、フリーランス美容師として成功し続けることができるでしょう。
【お客様向け】フリーランス美容師の探し方・マッチング方法
お客様側からすると、「良いフリーランス美容師を見つけたい」というニーズもあります。フリーランス美容師を探すには、Instagramなどのsnsで検索する方法、minimoなどの予約アプリを使う方法、知人からの紹介をもらう方法などがあります。
フリーランス美容師とお客様をマッチングするサービスも増えており、自分に合った美容師を見つけやすくなっています。
まとめ|フリーランス美容師で理想のキャリアを実現しよう
本記事では、フリーランス美容師の働き方について、メリット・デメリット、収入の実態、必要な手続きまで詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
フリーランス美容師とは、美容室に雇用されず個人事業主として働く美容師のことです。「業務委託」「面貸し」「シェアサロン」という3つの働き方があり、それぞれ特徴が異なります。
フリーランス美容師のメリットは、収入アップの可能性、自由な働き方、お客様との深い関係構築、初期費用の抑制などです。一方、デメリットとしては、収入の不安定さ、雑務の増加、福利厚生の喪失などがあります。
フリーランス美容師の平均月収は約40万円、年収は約480万円といわれています。正社員美容師の平均年収(約330万円)と比べると、収入アップが期待できる働き方です。
フリーランス美容師に向いている人は、固定客を持っている人、自己管理ができる人、積極性がある人、集客活動が苦ではない人です。
フリーランス美容師になるためには、開業届の提出、確定申告の準備、国民健康保険・国民年金への加入などの手続きが必要です。青色申告を選択することで、節税メリットを受けられます。
フリーランス美容師という働き方は、自分らしさを出せる魅力的な選択肢です。しかし、準備不足のまま飛び込むとリスクも伴います。
まずは現在の指名売上を確認し、固定客をしっかり増やすこと。そして、集客方法やスキルアップの計画を立てた上で、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事が、フリーランス美容師への道を検討している方のお役に立てば幸いです。
参考URL:
- 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
- 株式会社リクルート「美容サロン就業実態調査(2024年)」https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2024/0425_14272.html
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「青色申告制度」

